藤子・F・不二雄先生は、「のび太のねじ巻き都市冒険記」を執筆中に、亡くなられました。
執筆中であったものの、先生の残しておいたメモ書きによって、藤子プロがこの作品を完結させることができたのです。
この作品で、のび太たちは緑いっぱいの小惑星に、ぬいぐるみたちのための楽園をつくるが、「熊虎鬼五郎」が乱入することにより、のび太たちにピンチが迫るというストーリーの展開は、それまでの大長編ドラえもんに共通しています。
ここでのび太は、36億年前に地球と火星に「生物の種」をまいた「種まく者」と出会うことになります。
「種まく者」は、人間によって環境が破壊されそうになっている地球の未来は、のび太たちにかかっていると告げます。
そして、のび太は、その試練に立ち向かうことを決め、熊虎鬼五郎など恐れず、未来をつくり上げていこうとするのです。
また、悪人である熊虎鬼五郎にも、良心があることを知らされるのです。
この作品を通して感じることは、現実にどのようなことが起こったとしても、希望を決して捨ててはいけない、ということではないでしょうか。
この作品には、困難が訪れたとしても、それに立ち向かって行き、これからの未来をつくって行って欲しい、という子供たちに向けた、先生の熱いメッセージが込められています。
しかし、「種まく者」がのび太たちに、「ねじ巻き都市」の未来を託して旅立って行く場面は、先生が自分の寿命が長くはないことがわかっていたように感じられます。
この情報は定かではありませんが、明確なことは、倒れる直前まで、先生はこの作品に命を吹き込んでいたということです。
ドラえもんの劇場用アニメ映画の原作として、描かれた長編漫画のことを「大長編ドラえもん」と呼ばれています。
長編は短編と比べると、ストーリーが大規模になっているのが特徴です。
短編の舞台は、ほとんどが町内という狭い環境で、友達数人だけでストーリーが進みます。
一方、大長編では、大昔や他の惑星などという、日常からかけ離れた世界が舞台となっており、その世界で出会う住人や手強い敵など、たくさんの登場人物が現れます。
毎回タイトルに「ドラえもん のび太の~」と付けられているように、主にのび太たちの活躍と成長の様子が描かれています。
いつもののび太は、何をやってもダメな少年ですが、冒険の世界に入ると、勇気をもって敵に立ち向かっていく、かっこよい少年になります。
また、いつも乱暴なジャイアンは、好人物になることもあります。
大長編では、ドラえもん、のび太、しずかちゃんなどの、メインの5人に固定されています。
そして、基本的に、その5人とストーリーのキーキャラクターと供に、自分たちだけの力で危機から脱出しようとします。
そのため、人間関係が短編とは少し違ってきます。
短編でのび太は、いつもジャイアンやスネ夫にバカにされて、しずかちゃんなど他の友達のところへ逃げていくことが多いのですが、大長編では、いつも5人だけで行動し、日常の他の友達などは入ってきません。
ジャイアンに対して頭にくることがあっても、結局は仲間になるのです。
それらが、ドラえもんの短編と、大長編の違いだと思われます。
いつもダメなのび太でも、映画の中では大活躍しているので、なんだか励まされますよね。
ドラえもんといえば、四次元ポケットから出す、未来の道具の「ひみつ道具」が有名ですよね。
ドラえもんがひみつの道具を使うときは、殆どの場合、のび太を助ける目的で取り出します。
一部の「ひみつ道具」には、ドラえもんが製造された時に、最初からポケットに組み込まれていた道具もあるようです。
しかし、実際のところは、ドラえもんが未来のデパートに行って買ってくることが多いです。
ドラえもんが買う道具には、高価な物がないわけではありませんが、ほとんどが安い物で、1回限りの使い捨ての道具が多いです。
中には、レンタルした道具もあるようです。
「ひみつ道具」は百ヶ月に一度、セワシとドラえもんが定期検査を行って、故障しているものがあったら、それは修理に出すようにしています。
このようなことから、目当ての道具がすぐに使えないことが多いです。
また、使えなくなってしまった物や使わない物、また危害を与える可能性のある物などは、「四次元くずかご」に処分するか、穴を掘って埋めているようです。
未来のデパートで購入したものは、店員を呼んで返品することができます。
「ひみつ道具」は、規則によると、個人的で使う以外には使用してはいけないことになっています。
たとえば、金儲けを目的として使うと、莫大な罰金を払わないといけません。
犯罪に「ひみつ道具」を使用した場合は、タイムパトロールに逮捕されます。
このように「ひみつ道具」は奥が深く、それが「ドラえもん」の魅力のひとつではないでしょうか。
2008年の映画ドラえもん「のび太と緑の巨人伝」を、紹介していきます。
「のび太と緑の巨人伝」の物語は、のび太が捨てられた小さな苗木を裏山で見つけ、拾って来るところから始まります。
のび太は、その苗木を庭に植えたいとママに言いますが、それを反対されてしまいます。
そこで、ドラえもんに相談することにします。
ドラえもんのひみつ道具「植物自動化液」によって、苗木は自由に自分で動けるようになります。
すると翌朝には、その苗木が小さなかわいい男の子のような姿に変わっています。
そして、のび太は、その子に「キー坊」と名付けて、とてもかわいがります。
そのうちに、キー坊はさまざまなことに興味が湧くようになり、のび太の家族や友達にも溶け込んでいくのです。
ところが、のび太たちが、ある日裏山に行ってみると、巨大な渦が出現していま・・・。
この映画は、「ドラえもん」がリニューアルされてから、3作目となる映画です。
のび太たちは、キー坊と共に、植物が支配している「緑の星」へと出発します。
そこで明らかになる、恐ろしい計画から地球を守るために、のび太たちが必死に闘う姿を描いています。
この物語の最大のテーマは、「環境問題」にあります。
でも、ただ単に自然を大切にしようと伝えるのではなく、自然を大事にしようとする思いやりの心を育てることが、何よりも重要だと伝えています。
そして、子どもたちは楽しみながら「環境問題」に触れることができ、大人たちには少し考えさせられる作品となっています。
映画「のび太と緑の巨人伝」に登場しているキー坊は、この今回が初登場ではありません。
雑誌で初めて登場したのは、1984年の「小学4年生」4月号に掲載された「さらばキー坊」です。
原作コミックでは、33巻に収録されている「さらばキー坊」で登場しているんですよ。
「さらばキー坊」の後も、そのストーリーがとても好評であったことから、その続編となる作品にも登場しています。
「さらばキー坊」のテーマが、「自然破壊」であったためか、その続編でも「自然破壊」がテーマとなっています。
当初、「さらばキー坊」でのキー坊は、裏山で成長している若い小さな木でした。
裏山では、団地を建設するために森林伐採が進み、自然破壊が行われていました。
そこで、のび太とドラえもんは、その若い木だけでも助けてあげようと、ひみつ道具の「植物自動化液」で、若い木を自分の意志で動けるようにします。
まさにその若い木がキー坊で、のび太たちと暮らしていくうちに、少しずつ成長していきます。
しかし、ある日、植物星から植物型宇宙人が訪れます。
彼らは、地球の植物を救おうと、全ての植物を植物星に移住させる目的で、裏山の樹木をまず宇宙船に吸い上げてしまいます。
そのとき、ドラえもんとのび太、キー坊も宇宙船の中に吸い上げられてしまいます。
そこで、その計画を聞いたキー坊は、地球では動物と植物が助け合って生きていること、自然破壊を引き起こしてきた人間も、それを反省してきている事を伝え、猶予期間を求めます。
それに対して、植物型宇宙人は、計画を即実行することを中止して、100年間の猶予期間を与えます。
そして、100年経ったときに、地球の自然環境が今よりも荒らされていたら、また戻ってくることにします。
その際、キー坊は、植物星で優れた文明を学びたいと思い、のび太の下を離れていくのです。
これが、初めてキー坊が登場した作品なのです。
その後も、「ドラえもん のび太と雲の王国」で再び登場しているんですよ。